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平凡な日々の日記


by seaofsea
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第二話 中学生②

ユウスケが・・・私のことなんて好きじゃないと思っていたユウスケが

私とユウヤの恋を妨害しはじめた。

妨害というより、今になって自分の気持ちに気づいたようだった。



ある日ユウスケより三つくらい下の男の子が私の部屋まで手紙を持ってきたのだ。

男子と女子の部屋は離れていた為、用事があるときはこうして「使い」をよこして意思の伝達をはかっていた。

ユウスケの書いた手紙はこうだった。(何度も何度も読んだので今でも覚えています。)




サオリへ。

俺はどうかしてた。

お前とユウヤが付き合うって聞いたときどうにかなりそうだった。

体育館に呼び出したときも、何度止めに行こうかって思った。

あの時は本当に気が狂いそうだった。

俺はずっとお前のことが好きだったのに、いつもケンカしてたから

そんな事いってお前に笑われるのが怖かった。

でも俺とユウヤは友達だし、あいつに幸せになってもらいたかった。

だんだんお前とユウヤが仲良くなっていくのをみて、もう我慢できなくなった。

ユウヤには悪いけど言います。

俺はサオリが好きです。 
 




どうして?ユウスケは私のことなんて好きじゃないからユウヤとキスまでできるようにお膳立てしたんでしょ?

なのになんでユウヤとやっと上手くいきはじめた頃にこんな事するの??



でも私は無条件に嬉しかった。涙がとまらなかった。

何度も何度もその手紙を読み返した。

そして私はすぐに返事を書いた。




ユウスケへ。

びっくりしました。まさか、と思いました。

私も同じ気持ちです。

ただ、ユウスケが私とユウヤの事を応援していたから、私は諦めました。

なのに、今更こんなこと言うなんてずるいよ。

もう私とユウヤは始まってしまったのに。

もう今更どうすることもできないよ。

しばらく考えさせてください。どうしたらいいのか分かりません。







自分の気持ちに正直に従えばユウヤを傷つけることになる。その頃は私もユウヤを好きになりはじめていたし

簡単に「本当に好きだった人に告白されたから、別れましょう」なんていえるはずもなかった。




しかしユウスケは違った。自分に正直でまっすぐなユウスケはその気持ちを隠す事はなかった。

ちゃんと自分で本当の気持ちをユウヤに気持ちを伝えたらしい。

そして一発殴られて「泣かせたら殺す」とユウヤに言われたんだと、だいぶ後になってから聞いた。



全てを知ってしまったユウヤと二人きりで話をすることになった。



サオリ 「ユウヤ、ごめん。本当にごめん。」



ユウヤ 「それでサオリが幸せになれるんならいいよ。俺はお前の気持ちも気づいていたし。」



サオリ 「でもね。ユウヤの事は好きだったよ。それは嘘じゃないから。」



ユウヤ 「うん。ありがとう。ユウスケと仲良くしろよ。あいつには泣かせたら殺すって言ってある      から!なんかあったらすぐ俺に言えよ。ぶっとばしてやるからさっ!!」


サオリ 「ユウヤ、本当にありがとう。ごめんなさい。」



私は泣きながら謝っていた。ユウヤはずっと笑っていた。

ユウヤが一番泣きたかったはずなのに・・・。

ごめんね・・・ユウヤ・・・。





そしてユウヤはその年の夏に、まるで私達から逃げるようにして退院していった。





私とユウスケは自然な流れで付き合うようになった。

ユウスケはおそらく私が初めて本気で好きになった人だ。寝ても覚めてもユウスケの事しか考えられない。

いつも頭の中はユウスケのことでいっぱい。

人を好きになるという事がこんなに苦しい事なのか、と実感した。




中学二年生の私たちは好奇心だらけで、いつも二人で人気の無いところを探しては愛し合っていた。

といっても最後まで行くことはなかったのだけど・・・。



指を入れられたときに激痛が走り、これでは本番なんて冗談じゃないと思ったからだ。

ただ、キスをしてユウスケが私の体を触る。それだけで幸せでそれだけが全てだった。



ある日ユウスケが手術をすることになった。

私は心配で心配で仕方なかった。主治医の先生にしつこく「大丈夫なの?」と聞いてまわった。



そしてユウスケの手術は無事成功した。

これほど嬉しいことはなかった。けど、ユウスケが手術をした事は退院が近いことを意味する。

術後の経過も順調だったし、あとは家に戻って翌年の受験に備えなければならなかった。



手術して一週間がたった頃、ユウスケが手紙をくれた。




明日から学校に行くので毎朝迎えにきなさい。

ストレッチャー(動くベッドのようなもの)なので自分で運転できません。

宜しくお願いします。





ユウスケらしい命令だ。

でも同じ部屋の後輩や友達に頼まないで、それを私に頼んでくれたことが嬉しかった。



翌朝私はユウスケを迎えに行った。



サオリ 「ほら!行くよ!えー?まだ着替えてないのー?」


ユウスケ 「あー、ちょっと待ってよ。色々と不自由なんだよ。」



ユウスケは看護婦さんに手伝ってもらいながら着替えをしている。

支度を終え、ストレッチャーにうつ伏せに乗ったユウスケは偉そうに言った。



ユウスケ 「押せ。」



サオリ 「偉そうに。途中で放置してやろうか!」



私はユウスケの頭の方に立ち、ストレッチャーを押し学校へ向かった。



途中ユウスケが



「谷間とはいえない谷間が見えそうなんですけど(笑)」


とからかうので、私はわざと壁にストレッチャーをぶつけてやった。



「ちょっと!傷にひびくからやめてくれ~!!」



「今度のぞいたら、ここにおいて行くからねっ!!」



そんな毎日が楽しくて、嬉しくて、幸せだった。

永遠に続くような気がしていた。
# by seaofsea | 2007-02-20 19:12 | 恋愛 小説 平凡だった女の恋愛記